その暗闇の中で、
ゆっくりと腕を伸ばすとその鳥は、
私の腕へとスーッと止まった。






その鳥が語る声は、
和鬼と呼んでいたあの少年の声。










咲、聞いて……。


咲を一人にしてごめん。
咲を巻き込んでごめん。



そして、
咲を悲しませてごめん。



今感じる咲を包む温もりは、
咲が愛されている証。



一花や司。
二人の温もりは感じられる?



そして生まれてからずっと咲を守り続ける、
お母さんと咲久。


咲のお祖父ちゃんの温もり。










この声と共に流れ込んでくるのは、
一花と司が、今もお祖父ちゃんの来客の傍で
ゆっくりと祈り続けているイメージ。



お祖父ちゃんの傍には、
お母さんが居て、その後ろには望と呼ばれていた子供と
今のお母さんの旦那さんが、同じように祈り続ける。

三人もお祖父ちゃんの傍で、
私の為に祈ってくれてるの?


お母さんの手には、
今の私の写真と……幼い日の私の写真が
しっかりと握られていた。



そして……お祖父ちゃんの来客である少年少女は、
何かの文字を描のように指先を動かしながら、
目を閉じていた。









咲……。

一人じゃない。

だから悲しまないで。










悲しまないで……。






そう紡いだ言葉。








その声が今まで以上にもっと身近に近づいて
耳元で囁かれたような錯覚が包み込んだ途端、
真っ黒な霧が晴れ渡っていく。





その向こう、私の名を何度も何度も呼びながら
私を抱きしめて倒れている和鬼の姿。