塚本神社の御神木。
あれはお祖父ちゃんの神社。
とっても綺麗な桜なの。
そこで私はずっと見てた。
桜の木に腰掛けて、
街を見下ろし続ける少年を。
少年?
『咲、ボクだよ。
気が付いて……』
殺せと命じる声に割り込むように
ノイズと共に時折、流れ込んでくる声。
『咲……。
ボクの名を紡いで』
ノイズと共に繰り返し流れこんできた
その言葉は、やがて鮮明な音声へと変化を遂げていく。
咲?
咲は私の名前。
ふいに倒れこむ感覚と共に
直接流れ込んできた意識。
『ボクだよ。
和鬼だよ』
……和鬼……。
その名前に
心が僅かに光を灯した気がした。
「和鬼……」
その名を呟いただけで、
真っ暗な世界に、
細い光が差し込んでくる。
その光が導くように
私の方へと真っ直ぐに
近づいてくる金色の鳥。



