『ちくしょー。
 
 審判審判って、
 てめぇが偉いのかよ。
 
 あれは、何様だよ。
 
 俺らの大事なダチを
 奪いやがって』





感情任せにボクに同意を求めるように
叫ぶ珠鬼の声。

悪気のない珠鬼のストレートな声は、
ボクに深く突き刺さった。

その刃は、
今も心の奥に突き刺さったまま。


ボクの心はその頃から
ゆっくりと凍りつき始めた。




孤独と向き合う時間の
始まりを告げた嵐の日。




その日から長き夜が訪れる。










体内に気は巡りだしたものの、
相変わらず、体に力は入らない。




何とか起き上った布団の上、
衣服の袖越しに、腕を見ると
昨日まではなかった、真っ黒い何かが
ボクの皮膚に侵食していた。



ボクをこの場所まで、
誘って連れ帰ってくれたらしい
桜の花弁に指先で触れながら
腕の闇を見つめる。




これは……あの少女、
紅葉と風鬼からの置き土産?



それとも……
ボクが恐れながらも求め続けていた
罰される時が近づいているのですか?




鬼の国主としての務めを放棄して、
ボクが人に想いを寄せたから?


桜鬼神としての務めを
利用して、
私利私欲のためにその力を使ったから?


恐る恐る、闇色の皮膚に触れるものの
痛みが走ることはない。





侵食するように、闇色に染まった腕を
衣服で隠すと、
今度は壁の力を借りながらベットから起き上がる。






帰らなきゃ。

ボクの帰る場所へ。






咲のことも気になってるんだ。