勾玉を手渡していても、
今の咲はとても不安定だから。



そんな咲の気が途切れたのは、
YUKIのバースデーLIVEを翌日に迎えた夕方。


最後の打ち合わせの最中、
異変に気が付いて、ボクは有香の断りを得て事務所を後にした。

やるべき明日の支度は済んでる。





朝から慌ただしい天気は、
雨が降ったり止んだり、再び降り出したり。




どんより曇り空から、午前中降り始めた雨は午後には一度上がったものの
少し前から、また降り始めたみたいだった。



人には視えぬ、鬼の姿のまま
陰から陰を渡り歩いて、咲の気が途切れた場所を探っていく。


意識の中で、神木のビジョンを吸収しながら。



辿り着いた場所は、
咲がいつも通学で使用している山の中。


咲は顔を赤く染めながら、
山道で倒れてた。


降り出した雨が、咲の体温を奪って冷たくしていく。


咲の体をゆっくりと抱え起こすと、
ボクは今回も、鬼の神気を流し込んでいく。


契を交わしてしまっている咲の体には、
この気は、毒にはならないから。


咲に出来ることは、
こんなことしかないから。



生吹(いぶき)を流し込むと、
咲を抱え上げて、自宅へと舞い戻った。



ボクのベッドに眠らせながら、
咲の傍で、ゆっくりとベッドに体を預ける。






ボクが
咲を追い詰めてるの?









咲の寝顔を見つめながら
無意識のうちにボク自身を責める、
もう一つのボク。



YUKIとして、
この世界に居場所を求めたのもボク。


咲の隣を和鬼の居場所に
定めたのもボク自身。