「今日、朝起きたらあったんだ」

「朝起きたらってことは、
 まだ和鬼君と逢えてないってこと?

 そろそろ二週間?」

「……そんな感じ。
 
 和鬼……一時間くらいしか
 居なかったみたいなんだ」

「一時間かぁ……。

 うーん、でも一花にシバかれても
 ちょっと、和鬼君に一発入れたくなってきた。

 私の咲を悲しませるなんて」


なんて声のトーンを低くして吐き出す司。


「司……怒ってくれて有難う。

 とりあえず……大丈夫だから。
 もう少し待つよ」


そう言いながら、窓の外に視線を向ける。


さっきまで晴れていた空が、
どんよりと曇って、パラパラと雨が降り出してた。


「あっ、咲。

 一花がYUKIのバースデーイベントがって言ってたぞ。

 明日がどうとかって騒いでたけど、
 咲は行かないの?」


YUKIの誕生日イベント?

そんなの知らない。


誕生日?
そうだ……誕生日も知らない。

和鬼、貴方の誕生日はいつ?




司が教えてくれた、
一花先輩からのYUKI情報。


それが更に
私に追い打ちをかけていく。



とりあえず宿題は、司のノートを丸写しして
その後の授業は、上の空で一日を終えて放課後のテニス部。



全ての不安から逃れようと、餓えてしまった、
温もりを忘れるように一心不乱に練習した。


どうやって自分が家に帰ったのかもわからないほどに
自分を追い込んで、
帰宅したらしい私は和鬼のベッドの上で目が覚めた。


「和鬼……」

ベッドにもたれるように、背中を預けて座っている和鬼に
ゆっくりと手を伸ばす。

「咲」

伏せられていた瞳がゆっくりと開いて、
心配そうに近づけとくる顔。

近づいた顔は止まることもなく
私の唇に触れた。