和鬼へ


ただいま。
今、後片付け終わって
自分の部屋でTV見てます。


和鬼、ちょっと緊張してる?
表情硬いよー










送信。



携帯を握りしめてベッドに転がりながら
ボーっとTVを見つめながら和鬼からの返信を待つものの
すぐに帰ってくるはずもない。

思わず音沙汰のない携帯を投げつけて八つ当たりしそうになったけど、
何とか我慢して、机の上に放置した。

番組には、
次から次へとミュージシャンが登場してくる。


そんなTVを見ながら、
視線は和鬼を追いかける。

YUKIとしての和鬼でも、
私は……この際、感じていたいよ。


充電切れだよ……。



鬼の世界から戻って来る時、
和鬼を守るって決めたのに……
私が和鬼にずっと守られてる。



こんなにも和鬼が傍に居ないことが
私を不安定にさせてる。



和鬼に出逢って、
私……めちゃくちゃ心が弱くなってる……。



『責任取ってよ……』



思わず言葉に出す本音。


誰かの音楽が、TVのスピーカーから流れる
その場所に……私は一人。


前にも……あった……。




『ママ、パパは?』

『パパは、もう居ないのよ。

 パパは外に女を作って、
ママと咲ちゃんを捨てて出て行ったのよ』






ヒステリックに泣きながら
私に縋り付いてたお母さん。

まだ幼稚園に通っていた時の、
幼い日の記憶。

真実がどうであれ、
お父さんが私を見捨てたことは事実。

その日からお父さんに捨てられた私は、
お母さんには捨てられないよう必死になった。

家の手伝いも沢山した。

ずっとお母さんの顔色を見ながら、
いろんなものを我慢してきた。

お母さんが仕事に出掛けている時、
家での友達は、TVの音だった。

そして運命の小学校五年生の夏休み。