朝ご飯を作り、神木に挨拶をして
山越えルートで通学。

約束通り、
学校の校門前に有香さんはYUKIを迎えに来てた。


「いってらっしゃい。
 和鬼」


お別れの時間。


和鬼を車の中へと見送ると、
私は実力テストを退治するため、
教室へと向かった。




テスト勉強は、
打ち上げに参加する前に
司に教えて貰っただけだよ。



「ごきげんよう」


っとシスターに挨拶をして校門を通過すると
自分の机で、必死に暗記に努めた。




その日からYUKIの仕事は
活発になっていった。



TVは、ワイドショーでもYUKIの復活を伝えて
サイン会に、ファンイベント。

2ndアルバムのプロモーションに、
歌番組。


YUKI検索のキーワードで引っかかる
TV番組は毎日のようにあって、
その度に録画して、
少しでも和鬼を感じる。


YUKIは私が求める和鬼じゃない。

だけどYUKIの中にも、
和鬼が存在してるから。



矛盾してる。
だけど、どうすることも出来ない女心。





実力テストの日から、
更に一週間。



梅雨明け間近と言われながらも、
停滞する前線は、
その兆しを一向に見せない。



湿度を含んだ髪を
タオルで乾かしながら、ベッドにもたれて
TVをつける。

21時から始まる歌番組。


オープニングをボーっと見ながら、
携帯電話をジーっと眺める。



『和鬼の馬鹿』



小さく呟きながら指先に引っ掛けた輪ゴムを
TVモニターの和鬼へと発射する。




画面の中の和鬼は、
今日も笑顔を忘れずに、
平安装束の水干をアレンジしたような
着物を纏って弄られてる。


TV番組の中では、
新たな追加公演の発表。

それは日本を飛び出して、
ワールドツアーまで決まったって言うお知らせだった。

本当に忙しそうに
YUKIとしての生活をこなしてる和鬼。


そんな和鬼を見て、
体を厭う言葉の一つも出てきそうなものなのに
今の私には余裕なんてなくて。



和鬼に捨てられるんじゃないかって
ビクついてる。