「さっ、司。
手伝ってちょうだい。
咲、今から明日の試験勉強を必死になさい。
司にみっちりと教えて貰うこと。
今日の家事は私が代行するわ。
咲のお祖父さまのご飯も気にしなくていいから、
待ち合わせ時間に出掛けなさい。
出かけて素直になりなさい」
すでに決定事項になったらしい私の今日のスケジュール。
一度自宅に戻った後、
約束通り、一花先輩は譲原家の家事を分担。
私は着替えを済ませて、
司の家の車で、
有香さんとの待ち合わせの場所へと送り届けられた。
「こんばんは、咲さん」
「こんばんは。
有香さん……私なんかがお邪魔していいのかな?」
「えぇ、和喜が喜ぶわ」
そう言って、打ち上げ会場となっている建物へと
私を案内した。
ホテル内の一室。
机の上にはズラリと並べられた料理。
立食形式で好きなものを好きなだけ
自分で選んで楽しむ時間。
和鬼は私を見つけた途端、
手招きして近づいてくる。
この場所に居る皆は、
私と和鬼の関係もちゃんと
見守ってくれてる理解者ばかり。
YUKIをサポートしてる人たちは、
皆、今人気の人たちばかり。
あっ、Ishimaelの魁くん……。
司が会いたかったかも。
そんな風に思いながら、
その時間を私なりに楽しんで、
一次会の終了をきっかけに、
和鬼と二人、有香さんの車で会場を離れた。
有香さんが運転する車内、
後部座席に二人肩を並べて
私はYUKIとしての和鬼に話しかける。
「お疲れ様。
アルバム作るのって時間かかるんだね。
桜が満開だった春が、
もう梅雨の季節なんだもん。
和鬼がYUKIとして、頑張ってるのは凄い。
って言うか……本当は私たちが頑張んなきゃなのに、
和鬼が台所も私好みの最新キッチンにリフォームしてくれた。
お風呂場だって、お手洗いだって
新しくしてくれて、住みやすいお家にしてくれた。
神社のお社だって」
「ボクが咲と咲久の為にやりたかったんだ。
咲は気にしなくていいよ。
ボクは今、もう一度この世界に戻ってきて良かったって思ってる。
思ってた以上に、この世界は優しいね」
和鬼は私の顔を見て、柔らかに微笑みながら告げて
視線をそっと窓の外へと移した。



