それは有香との出逢いの日にも似て、
懐かしい香りに誘われるように、
もう一度彼女の手を取った。


彼女と共に事務所へと顔をだし、
念の為にと大学病院で診察を受け、
異常がないことを確認したものの、すぐには表舞台へと変えることなく
休養を兼ねてのレコーディングと言う地下作業期間となった。


その地下作業期間、ボクを支えてくれたのが
今、此処に居てくれるサポートメンバー。


ボクの2ndアルバムの制作を手伝ってくれたのが
彼らだった。


「YUKIさん、お疲れ様でした。

 今回、YUKIさんのバックバンドで
 勉強させて貰いました。

 今度はAnsyalで、手伝わせてください」


そうやって丁寧に頭を下げるのは託実くん。

託実君の隣、目を輝かせているのは祈くん。


「YUKIさん、
 少し触らせて貰っていいですか?」  
 

ボクのお琴に興味を抱いているのは魁くん。


「YUKIさん、別アレンジで桜月夜、
 こんな風に攻めてみたんですけど
 これもありですか?

 お許し頂けたら、今度LIVEでやりたいんですけど」


ヘッドホンをかけて、端末を操作していたTOMO君は
そう言いながら、ボクの方へと近づいてくる。

TOMO君の発言に、他メンバーも集まって来て
端末から出ていたヘッドホンを抜き取ると、
Bluetoothでメインスピーカーへと繋がって
サウンドが部屋に広がっていく。


ボクが演奏する桜月夜とは違ったテイストで
激しくサウンドが重なり合う演奏。

そんな視点で聴くことになった
ボクの曲が、
何処か何時もと違って聞こえてドキドキした。




「あらあら、まだ片付けてなかったの?
 今、高臣社長と宝珠さまが、
 エントランスに顔出したわよ。
 
 咲ちゃんと一緒に。
 さっ、移動しましょう」


有香が迎えに来てくれて、
ボクたちは、打ち上げ会場へと車で移動した。


一次会、二次会と続く打ち上げ。



だけど咲はまだ高校二年生。

一次会のみ一緒に過ごして、
二次会からはボクも会場を後にした。


有香が運転する車内、
後部座席に二人並んで座ったまま
久しぶりにゆっくりと話す機会。