その一瞬一瞬を
慈しむように
柔らかく……
……甘美な時間……。




和鬼によって……
美しい花を
咲かせていく……
最愛の時間。





『いつか……
 桜の木の下で……』





脳裏を霞める
古の誓いの言葉。






甘い時間に何度も啼き、
涙が一筋真珠を落とした……。





……幸せになろう……。




私たち二人は……
絶対に
幸せになろう。








「おはよう、和鬼」

「おはよう、咲」


いつもと同じ始まり。


だけど昨日とは違う
新しい始まり。



思わず時計を見つめて絶句。


遅刻するー。



慌てて和鬼の部屋を飛び出して
制服に袖を通す。


そして昨日とは違う三人分の朝食を
準備する。




お味噌汁の香りが
室内に広がっていく。



「お祖父ちゃん、おはよう。

 朝ごはん、出来てるから。
 後で、食べてね」



着替えを済ませて
優雅な足取りで台所に降りてくる和喜。


和鬼の時は幼さが残るのに、
和喜の姿の時はその幼さが……消える……。


プラチナの髪が窓から差し込む朝陽を受けて輝く。




何日か過ぎていたと思ってた時間は、
何もなかったかのように、
始業式の翌日を迎えただけだった。