御神木の下だった。
ご神木の桜の木の前。
祖父が式服を身に纏い祈りを捧げていた。
その隣には、
駆けつけてくれたらしい一花先輩と、
親友の司。
「ただいま」
自然と紡ぎだせた言葉に、
三人は一斉に私の方に視線を向ける。
「「「咲」」」
私の声に三人は同時に、名前を呼んだ。
「お祖父ちゃん、一花先輩……司……」
名前を紡ぎ返した私に、
一花先輩からは、いつもの強烈ハグ。
強烈ハグから解放されたら、
今度は司に、抱きしめられた。
「和鬼君は何処?」
視えない司は、私に問いかける。
和鬼の方に視線を向けて、
司に説明しようとしたら、
お祖父ちゃんが、和鬼の正面に歩いて行った。
「咲久【さくひさ】」
和鬼はお祖父ちゃんの名前を紡いだ。
えっ?
お祖父ちゃんは和鬼に向かって、
深々とお辞儀をする。
そういえば……言ってたっけ?
私が和鬼に出逢った
最初の夜……。
『出逢ったのだな……』って。
お祖父ちゃんが、
契約を交わした鬼も……和鬼?