「ボクにとっての最愛は
 咲……君だけだよ」




彼女が咲鬼の生まれ変わりだからじゃない。

咲鬼に言われたからじゃない。




ボクはボクの意思で彼女を見つけ、
咲に惹かれ、咲に恋をした。




「……和鬼……。

 私でいいの?」



涙を滲ませながらボクを見つめて静かに紡ぐ咲に
ボクはもう一度頷いた。



咲は、にっこりと笑ってゆっくりと目を閉じる。


その瞳から、宝石があふれていく。


ボクはゆっくりと咲の柔らかな唇に
指を辿って自らの唇を重ねる。




「……咲……。
 有難う。

 これで 思い残すことはないよ。
 
 咲と繋がることが出来たから」



ボクは咲の体をゆっくりと起こして、
壁へともたれさせて、
ゆっくりと立ち上がる。


そして咲の目の前で、
桜鬼神の姿をかたどる。





これはボクのケジメ。



国王として桜鬼神であるボクを裁く。





桜鬼神の武器でもある刀を
手に自らの喉元に近づけていく。




その刹那、ボクの掌から
奪い去られる刀。



刀を奪い取って、
ボクの前に立ちあがった咲。


「和鬼。

 何考えてるの?」


真剣の瞳が
ボクを突き刺していく。



「こうしないと、ボクは前に進めない。

 ボクは咲鬼と関わり、
 自らのエゴを持ち込んで桜鬼神の力を使った。

 私利私欲の為に、国王の許可なく使われる力は
 桜鬼神には許されない。

 咲鬼の記憶操作を含めてボクは自分のエゴを
 優先させた罪がある。
 
 その罪を裁けるのは国王のみ。

 その国王は今はボクだから」

「だから……逃げるの?

 和鬼は一人、死んで逃げ出して
 私一人を苦しめるの?」



彼女の言葉にボクは何も返せない。