携帯電話の液晶に映る和鬼を見つめる。



この和鬼は和鬼ではなく、
YUKI。

和鬼の姿のままでは、
写真にすらその姿を捉えることはできない。


YUKIとして存在出来て、
和鬼は和鬼として人間界に受け入れて貰えなかったんだ。



今の私みたいに。




目尻から暖かいものが筋を描いて零れ落ちる。




和鬼はこんな寂しさを
とれくらい耐え続けてきたの?



思わず和鬼が歌うYUKIの曲をもう一度再生する。




蝋燭の炎がゆらめく、
大広間に和鬼の声が静かに広がっていく。





途端に人々が周囲を
キョロキョロとし始める。




思わず耳を澄ませてみると、
桜鬼神っとか何とか人々が、
和鬼のことを話しているのに気が付いた。







『桜鬼神か』

『今更、何を……』

『同族を狩ることしか出来ぬ
 アレを現王は何故のさばらせる』








えっ?

桜鬼神は……和鬼は、
鬼の世界でも嫌われているの?

何故?


更に耳を澄ませてみるけれど、
それ以上は、私には話が見えなかった。


相変わらず、騒めき続ける大広間。


大広間にはたくさんの人々が居るのに、
私の存在に気が付くものは
今も誰も居ない。