二つのボクが常に鬩ぎ【せめぎ】あう。





そしてボクの宝物。





遠い昔、咲鬼と……交わした……
悠久の誓い。





契り……
……約束……





ふいにボクの住処の
空間が歪む。





瞬時にあばら家で剣を手にして、
その歪みの生じたその場所へ意識を向ける。



剣を一振り。




鬼の力は失ってはいない。

桜鬼神としてしての力は、
今もボク自身から溢れ出てくるのを感じる。


ボクが失ったものは、
人の世に住む……権利……なんだね。


軽く目を伏せ、神経を狭間の世界の隅々にまで
巡らせていく。




意識を週中させた途端に、
ボクの心は戸惑いが隠せない。




桜の回廊を渡ってしまった咲が、
この世界の瘴気【しょうき】に中てられて【あてられて】
倒れているのが感じ取れた。



何故、君がこの場所に入れるの?




ボクが出入りする桜の回廊。
狭間の世界と、人の世界の出入口。



刀が映し出した空間内の情報に
慌てて、その場所へと向かう。