YUKIは、いつもの如く
幻想的に舞いながら言葉を紡ぎ、
音霊に心を乗せてその闇に溶け込ませていく。
桜吹雪はYUKIの声に
舞い踊るかのように流れ、
桜の花弁も……篝火の炎を受けて輝いて見える。
私が演奏する……お箏に
ゆっくりと歩み寄ってきたYUKIは、
私の背後にまわり私が演奏する音色に重ねるように
同じ箏からもう一つの音色を重ねていく。
二人で刻む時の調べは
何処までも……柔らかで。
歌は終焉に向かっていく。
同じフレーズを
何度も何度も繰り返す。
YUKIが一人で紡いでいた
歌声にファンの子たちの声が重なる。
その曲を知らない、
氏子さんたちの声が
一つ一つゆっくりと重なっていく。
一つに……全てが溶け合っていく。
祈りに満ちた神聖な空間。
周囲が不思議と穏やかに広がり、
不浄が清められて一掃されるような錯覚。
何度も何度も、
繰り返される同じフレーズ。
そのフレーズを繰り返しながら、
……YUKIは……和鬼は……涙を流していた。
切なそうに……
寂しそうに……。
そんな和鬼を抱きしめたくてたまらなかった。
YUKIの曲は続いていく。
繰り返される同じフレーズの中、
YUKIは……ステージをゆっくりと去って
人の世から……姿を消した。
……和鬼……
その涙の意味は何?



