奉納?
ちょっ、ちょっと待ってよ。
何処の世界に、この神社の神様本人に
神様への奉納をお願いする人が居るのよ。
氏子さんの中の婦人会のおばちゃんパワーに、
半ば押され気味になりつつも、私は発言に絶句する。
……和鬼……?
断ってもいいからね……。
苦笑いを浮かべながら、
困った顔をしている和鬼を想像していたのに、
何故か……和鬼は楽しそうで……。
「いいですよ」
にこやかに笑顔を振りまいて
微笑んでた。
……嘘……、マジでやるの?
「YUKIさん……。
本当にいいんですか?」
思わず他人行儀に聞き返す。
和鬼、正気なの?
この地の神様が、
自分の為に奉納してどうすんのよ。
『……咲……。
お箏借りていいかな?
なんだったら咲が演奏してくれても構わないよ。
咲の家からボクの曲が聞こえてきていたのは知ってるから』
私の戸惑いもなんのその。
悪戯っ子のような調子で
私の心に直接語りかけてくる和鬼。
「和鬼……。
まさか最初から、そのつもりで?」
私はYUKIの姿をした和鬼に向かって強気で発言する。
途端にファンからの視線が集中する。
フフっと鼻で笑うように
楽しみながら私で遊んでる……和鬼……。
そんな時間も心地よくて。
和鬼に流されるように、
私は自分のお箏を抱えて
神社の境内へと準備していた。
とんどの炎と
篝火だけの幻想的な世界。
ゆっくりとお琴の音色を
溶け込ませていく。



