私の日々は、家事・部活・勉強・お箏が中心になった。



桜が花を開かせる季節が訪れた。
四月、塚本神社の春祭りが行われる。


和鬼を祀る祭礼。



「咲、朝から済まぬ」

「大丈夫。
 私、神社の孫だもの」


春祭り当日、三時頃から禊に着付けに
準備に奔走している。

この日の為に、この地に住む人たちは
奉納する何かを練習する。

私も始めたばかりの、
お箏を演奏予定。



「咲、悪いがステージの方を
 見て来てくれるか?

 儂は来客の接待を奥でしてくる」




そう言って、お客さんたち
数人と姿を消したお祖父ちゃん。



託された表側をスムーズに運営できるように
気を配りながら、視線で探すのは和鬼の姿。



春の祭礼が始まるのは夜。
太陽が沈んでから。



神殿から神様の炎を受けて
篝火を幾つも焚きながら
本殿に備え付けてある
ステージでお能が奉納される。




そして儀式の後はお囃子で、
賑やかに周囲を包み込みながら
とんどに火をつける。




とんどの火は天高く立ち上り、
緑の葉を焦がす勢いになるものの
山火事が起きたことはない。



その後は、奉納と言う名の
氏子たちの発表会の場とかした境内を
私は神社の孫として挨拶をしながら
様子を見ていく。





和鬼、貴方は何処に居るの?



この祭りを貴方はどんな顔をして
眺めているの?



視線を移していく私。




ご神木の桜の木にも、
今日はお神酒が供えられて
氏子たちが賑やかに囲んでいた。