「あはっはっははっはっはっ、ゆ、ゆ、湯江が京極シリーズなんか読んでるよ~」



スタッカートしすぎだろ!広田!

っか、うっせぇ!話しかけるな!
ただでさえチンプンカンプンなのにますます集中できなくなってくる。

っていうか。

なんでこいつがキョーゴクっていうこの本の作者のこと知ってんだよ!
俺なんてつい昨日(それも哲平におしえてもらってたまたま)知ったってのに。



「よせよせ、無駄な抵抗すんなっての。湯江どうせよく分かってねぇで読んでるだろ」
「うるせぇ、ジャマするなよ。……なぁ、コレってノンフィクションなの?」


ンなこと聞いた途端、大爆笑。


「湯江マジバカじゃん?」
「いくら作者と同じ名前の登場人物がいるからって…妖怪だよ?妖怪小説なんだよ?それ?ノンフィクなわけねーだろ」

「え。妖怪小説?ってことはこれ、妖怪とか倒しにいく感じの話なの?」


またも巻き起こる爆笑。


「まじ知らんのか。それミステリーだって」
「しかも妖怪小説じゃないし。推理小説だし、それ」


おまえらなにドヤ顔で説明してんだよ。
つか知るかってんだよ!!ミステリーなんてさぁ!!



だいたい重いんだよ、重すぎなんだよ京極本。

辞書並み。むしろ枕に丁度いい。


早く読み終わらないといつまでも鞄の中にいれとかなきゃいけないし、
一冊読むのに何日もかかっていると実花に知られたらカッコ悪すぎる。




愛を貫くのって楽じゃない。くじけそう……。









「湯江くんってば最近おもしろいじゃん」


にっこり笑いかけてくるのはクラスメイトの伊藤さん。
上の中くらい、そこそこってか、ふつうにかなり結構かわいい。


「えー日野とか俺のことすげキモイ言ってますが?」
「うん、でもそんな湯江くん、あたし嫌いじゃないよ?」
「そんなこと言ってっと、ぱんつ取って食っちゃいますよー」


どうだ俺キモいだろ、伊藤さん。引け引け、引いてしまえ。


「んー。あたしべつに湯江くんならいいよ?」


え。

まじかよ脈あり。
何その女子力全開な上目遣い。


「湯江くん、今からウチ来る?」


わお。

それってモチロン、今日はパパママいません的な?旅行でいなくて今夜ダイジョウブ的な?


「え。それってマジな感じで?」
「うん、マジな感じで」


いいじゃんいいじゃん。食っちゃえって。
実花とはまだ付き合ってるわけでもねぇし。
伊藤さんかわいいし、滅多にないチャンスよ?

この娘のぱんつ取っちゃえよ。









「------ごめん、やっぱなし」












「馬鹿じゃね」
「勿体ねー」
「湯江しね」
「キモイ」


笑いたきゃ笑え。


「伊藤振ったって」
「は、湯江の分際で?」
「一生童貞でいろバァカ」
「腐っちまえ」




なんとでも言え、愚民ども。

俺はお手軽な愛になんてなびくもんか。