(1)プライドなど捨てられます



「だはははは、湯江、おまえ何なのそのダサい髪型っ」
「最近モード系狙ってんのか単にキモいだけかわかんねぇ奴多いけど、おまえは間違いなくキモい系!」




-------ああうっせぇっ。

こんな恥辱も実花への愛あってこそ。
耐えろ、耐えるんだ俺!




「はよー」
「おお!田所、見ろよ、見ろ見ろ!湯江のあのキモヘアー!」
「……え、…な、なにアレ……七三?」


登校してきたクラスメイトを片っ端から捕まえて、日村が俺を指差す。


「やべーよな、まじやべーでしょ?」
「湯江、ギャグなの罰ゲームなの?それともイジメとか?」
「や、あれが湯江的にイケてるらしいよ」

「湯江も終わったな、まじキメぇわ」
「つか消えた方がよくない?」
「賛成賛成。むしろ死ねみたいな?」



この三馬鹿どもが。好き勝手言いやがって……!



…スリー、ツー、ワン。



「日村、田所、広田。………てめぇらぶっころす……ッ!」


叫んで立ち上がったところで。

実花が教室に入ってきた。
(ミカ・マイ・ラヴ・フォーエバプリティっ!!)
そんな心の声が聞こえたのか、俺の顔見て眉を顰める。


「………え。湯江………?」


なぜ疑問系。

しかもダサめな男が好きなはずなのにこの反応。
完璧に腰が引けてるし顔も引き攣ってるし。

俺今日シャツインして、伊達で黒ブチ瓶底眼鏡までキメてんだぜ?
じいちゃんごめんね!拝借したぜ、老眼鏡。
(周りがよくみえなくて若干酔い気味。でも実花のため)


かなりいい感じのダサ男なはずなんですが。


ちょっとときめいてオプションで顔赤らめるくらいあってもいいはずじゃん?
なのにこのビミョーな反応何故。







だとしたらあと残るのは……性格?
こんな教室で「ぶっころす」とかいって大声上げてるような、
そんなガサツな男は実花は嫌いってことか?











「哲平ぇぇぇぇっ!!」


ヘルプデスクに駆け込むと、俺担当の実花弟、にっこりわらってのたまう。


「実花は知性派すきだよ?」






とりあえず古本屋のノベルの棚でいちばん分厚い本を買った。(つかこれ枕?)