忘れ物… あ、してきたかもしれない。 「え、祈、本当に忘れ物? すごい顔してたよ?」 そんなひどい顔だったのかな。 …じゃなくて。 うん、忘れ物。 「わすれ、も…の」 「とってくる? 私と瑞希、ここで待ってるね」 私は首を横に振った。 「帰ってて、い、いよ」 「でも…」 「だい…じょう、ぶ」 そう、と言って、弥生は心配そうな瞳をして私に見せた。 「じゃあ、10分だけ待たせてね」 10分。 私はコクリと頷いて、校舎に身を翻した。