彼女にこれという不満なんかなかったけれど、一度あんなところを見られて、しかも、今後もあのときのようなことが必ずしも起こらないと約束できない今の俺に彼女を引き止める資格はなかった。



彼女に見切りをつけられたなら、それまでだ。






このあたりが潮時だろうという気持ちの整理のつけどころにお互いの意識が収束したのだと、前向きに受け止めるしかない。






「わかった」






彼女は軽く頷いてきびすを返そうとした。





それを見つめ、匡は自分の意思とは関係なく、気づけば口をついて、








「……ごめんな」







そんな思いがけない言葉を放っていた。