理屈じゃない。




だからなおさら腹が立った。




いつにもまして授業に身が入らなかった。


だがその反面、やけに目は冴えて、普段なら三分ともたずに意識を手放す念仏のような倫理の授業も今日に限ってはちっとも眠くならず、おかげではじめて教師にほめられた。






「匡、今ちょっといいかな」





と、授業が終わるや否やメールがきた。彼女からだ。




首をひねって後方の席を見やると、久しぶりに彼女とまともに目が合った。ああ、髪色変えたんだっけ。




メールの意図をはかりかね、気だるげに首をかしげる俺に対し、彼女は決意を秘めた眼差しで廊下を指し示した。ちょっと外出て、ということだろう。




彼女とは例の大会初日での一件から、わかりやすく不仲になり、なんどか修復の兆しを見せたものの今ではすっかり倦怠期になって久しい。




そんな状態での呼び出しに期待はなかった。なにを切り出されるのかの想像はおおよそつく。