街頭の明かりが心もとなく闇を払う、ひと人気のない路地。
あのとき、彼女たちはあの無防備にすだれのかかった塀の前で、俺たちのために道をあけていた。
あたかも俺の知らない男に守られるようにして。
あの瞬間、うまれてはじめて頭が真っ白になった。
今もあのときの景色は目に焼きついて離れず、ともすれば俺の思考をまるごと奪う。
あいつマジで誰だよ。
同じ学校じゃあないよな。
吉田の学校、男子の制服はもっと別だった気がする。
彼女と同じ道を歩く親しげな男。
ごく自然に彼女の隣を占拠する生意気な態度。
刹那、窪川の脳裏をよぎったひとつの可能性に心臓がぎゅっと絞られて、背筋が異様にこわばった。
たとえば彼氏なら。
それならなんの違和感もない。
反対だって、遠回りだって、する。
(そういやあ、中学にあれっぽいやつがいたかも……!)
そう思うと矢も立てもたまらず、窪川は弾かれたように走り出した。

