「……とても、気持ちが悪いわ」
「はっきり言うな! あいつは高校でバスケを始めたから、一軍の同級生に自分の夢を見てんだよ」
「いつかは自分も同じ舞台に立ちたいって?」
「そう」
「健気ねぇ」
「夏原は裏表がないんだ。だからあいつに褒められると、なにかとあいつを構ってやりたくなるっつーか、あいつに言われると弱いっつーか、つい甘くなるっつーか」
「どうしてわたしもそういう人に惚れないのかしら」
不可解だわ、とつくづくと呟くと、窪川が怖い顔になって菜々子を見た。
「なんか言ったか?」
菜々子は肩をすくめた。
「だってそうでしょ。健気で純粋で、地道な頑張り屋だけど思うように芽が出ないなんて、一番女心をくすぐるわ」
「強くて長身でスポーツ万能な男には敵わないだろ」
「そう思ってるのよ、みんな、頭ではね。でも結局はそういうところに負けてしまうものなの」
「お、俺だって、けっこう健気で、純粋で、だけどめちゃくちゃ頑張り屋だけどな!」
「あなたは光が強すぎるのよ」
と断じると、そんなこと言われても、と言うように、窪川はしゅんと肩を落とした。

