「男よ」
「おかしくねぇな」
「しかも、そのうちの一人は有正なのよ」
すると今度は窪川のほうがむせた。
「は、はあッ!? あ、あいつどっか悪いとこでも打ったんじゃねぇの」
「熱があったのは確かよ」
「熱? ああ、こないだ高熱を出したとかなんとか」
「どう考えてもうわ言だとしか思えないでしょ? それ以外なんてありえないもの」
「………そこまで否定されなくてもいい気がするけどな」
「でもどうやらそうじゃなかったのよ」
「俺にそっちの趣味はねぇぞ」
「もう一人はあなたの保護監督の夏原って人よ。あの人なんなの? どうしたら
この猛獣を飼いならせるのかしら」
窪川はなぜかはにかみ、それを隠すようにわざと顔を伏せて、コーヒーの飛沫を拭った。
「夏原はよぉ、俺に憧れてんだよあいつ」
にやにや言う窪川に、菜々子は思い切り顔をしかめた。

