窪川の手が菜々子の手を包み込んだ。
溜め込んだ思いを吐露した反動で打ちのめされていた菜々子は、もう彼の手を拒むだけの気力がなかった。
「純粋に俺を好いてくれたらそれはそれで嬉しいけど、憎まれてても俺はそれでもいい。毎日殴られても構わない。脚は、できれば月一くらいに加減してくれると助かるけど」
思わず顔を上げてしまって、菜々子は猛烈に後悔した。
窪川の、屈託のない笑顔がそこにはあった。
「俺はおまえが好きだ。だから関わらないでほしいって言われることが俺は一番へこむ。どう思われていようと、俺にそばにいさせてくれることを許してさえくれたら、俺はそれだけでいい」
ただ、そばにいさせてさえくれたなら。
別人のような、窪川の熱くて真摯な眼差しが、頑なな自我を脆くする。すべてを委ねてしまいたくなる。

