「そ、それは……俺だって、わかってる」
「わかってない」
「わかってるよ! わかってるけど、だったら俺の気持ちは!? 俺はどうすればいいんだよ。周りの気持ちを汲んでみすみすおまえを諦めろってのか。そんなことできるかよ」
「そうするべき――」
遮るように、窪川は菜々子を抱きしめた。
鼓動が極限まで跳ね上がる。
「なに、するのっ!」
菜々子は必死に腕の中で暴れたが、がっちりホールドされてまるで歯が立たない。
「おまえを幸せにする。そうすることで、俺は俺なりにおとしまえをつける。そうすれば親父たちだってわかってくれる」
「身勝手すぎる」
「それでいい。そうじゃないと、俺の夢も、親父たちの無念も解消されない。だから……――痛ッ!!」
唐突に脛を蹴飛ばされ、窪川は悶絶してその場にうずくまった。
「蹴りは、なしだろぉ……」
「あなたって、本当に最低!」
「なっ、なんでだよ……ッ!?」

