「なに、してるの……」
息を呑んだ。
窪川が、あの窪川がまさか……。
だが、間違えようはない。
うす汚れた雪の上に膝をついて、窪川が許しを請うていた。
「あのときは……ほんとうに、ほんとうに悪かった。許してほしい。どうしたらおまえに許してもらえる?」
彼のつむじに雪が舞い落ちる。
固く握った拳を守るものはなく、真っ赤にかじかんだ手の甲が痛々しい。
「俺に、おまえを好きになる資格がないことくらいわかってる。言ったって一朝一夕に信じてもらえないことも……。でも、俺はもう二度とおまえを傷つけないと誓う。お願いだ。信じてくれ。頼む」
菜々子は狼狽し、足元の彼と周囲とを見比べた。
とりあえず、今の境内に自分たち以外の人はいないが、菜々子自身、屋外での土下座は見ていて気持ちのいいものではない。
菜々子はどうにかこうにか窪川の二の腕を掴んだ。
「そんなこといいから、立ってよ。風邪引くわよ。わたしがいじめてると思われるのも不本意だから」
「こんなときに神社になんか誰が来るかよ」

