今は……少しでも気持ちを軽くしてくれる言葉がありがたいのは、たしかだった。
だから今くらい――よりによってこいつというのがはなはだ不本意だけれど……素直になってみてもいいかと思った。
わたしも焼きが回ったものだ。
「このあいだは……」
菜々子は顔を上げぬままおずおずと切り出す。
「ん?」
視線を感じて、そっとマフラーを引き上げた。
「有正を助けてくれて、ありがとう…感謝してる」
「……ああ。いや、いいよ。……あいつ、なんか言ってたか?」
菜々子は力なく首を横に振る。
「有正は何も話してくれない。ただ、途中であなたに会ったって。あなたに会わなかったら帰って来れなかったみたいなこと言ってたから」
「そんな大げさなもんじゃねぇとは思うけどな」
「いや、大変だった。有正、あのあと高熱出して寝込んだの。きっと、ひどい状態だったのよ。あなたに会わなかったらと思うと肝が縮むわ……」

