急に取り乱した窪川に、菜々子は面食らった。
なにをそこまで必死になることがあるのか戸惑い、適当にあしらって別れるつもりがつい勢いに飲まれてしまう。
「う、嘘よ。好きな先輩なんて、嘘。有正のことを、祈ってたの」
二人はとりあえず、今日は閉まっている売店のひさしの下に移動して続けた。
「有正? あいつがどうかしたのか?」
「友だちが、できたの」
「は? あ、はぁ……なるほど。で?」
「………心配でしょう?」
「なにが?」
「なにがって、うまくみんなと距離感を保って、逆なでしないようやっていけるのかって」
菜々子が真剣な顔で言ったにもかかわらず、窪川はそれを一息に笑った。
「おまえそりゃ、さすがに有正のことを見くびりすぎ」
「あなたが有正のなにを知ってるのよ」
「あいつは意外とそつのない男だよ。周りもよく見えてる」
「口からでまかせ」
「まさか。おまえは母親みたいな目線でしかあいつを見たことがないからそうとしか取れねぇんだよ。あいつはあいつなりに付き合うやつを選り分けてうまいことやってるじゃねぇか」
「そう見えたことがないのよ」
「付き合いが長すぎんだろ。そういうもんだって、頭でできあがってんだよ。あいつなら心配いらねぇって」
そうだろうか。
だといいけれど。
まあ、こいつの言うことなんてなにひとつ信じられないのだけれど。
……でも、それでも。

