まだあなたが好きみたい


(まだ、ずいぶん短いな)


触れた髪は固く、長さも5センチあるかないかといったところ。

男なら、ひとつきもあれば見た目に与える変化は十分だが、元が長い睦美に与える変化はごくわずかだ。

あっという間に指を離れる。俺は前の、指先に絡みついてくる女性らしいロングヘアーが好きだった。

それになにより、長い髪が似合っていたから。


(あいつは多分、それもわかってて髪を切ったんだ)


だが、それにしても並の男より短いって、ほんと、容赦なしだよな。

匡は睦美の頭を撫でつづける。


「尾田とは、仲直りできたのか?」

「うん、たぶん」

「たぶん?」

「直接会ったわけじゃないから」

「尾田はもう怒ってなかったぞ」

「だと思う。お互い意地張ってたけど、それは多分わたしのほうが頑なだった」

「尾田に会いに来いよ」


睦美が顔を上げる。


「尾田と、ちゃんと顔合わせて、仲直りしたことを確認しろよ」


それが望みなら。

睦美はつらそうにまぶたを伏せる。


「この頭で学校に出て行く勇気ないよ。それに、あんなこともあったし、わたしもう自分がいや」

「髪は待ってれば伸びる。それは受け入れろよ」


匡はできるだけ優しく諭した。


「火遊びが過ぎた代償、ちょっとした火傷だと思えば乗り切れる。尾田がついてる。俺もな」

「窪川」

「それに、あいつらはおまえの過去なんか知らないし、あの日なにが起こったかも知らない。急に休むようになって、みんな心配してるんだ」