「なら、吉田さんは誰かを嫌悪し続けることに抵抗はないんですか。苦しくないんですか」
「不思議と苦しくはないの。おかしいですね」
菜々子は微笑むと、これ以上余計な申し出をされないよう追い込みにかかった。
「こんな半端なわたしより、夏原さんのほうがよっぽどあいつの相談相手に向いてると思いますよ」
夏原は、遠ざかる菜々子の背を見つめ、なんだかなぁ、と息をついた。
他人事でありながら放っておけない気持ちになるのは、二人の間に横たわる事情がどうやら相当複雑らしい様子だからだ。
(窪川だって、本当はそうなんじゃねぇの?)
だからあんなふうにしょんぼりしてるんだろ。
青いため息なんかついちゃってよ。
(難しいなぁ)

