両極端にある好きと嫌いが同居している、という状態が飲み込めないのだろう。
無理もないことだ。
だが、それを説明するには時間がかかりすぎるし、言いたくないことまで明かさねばならなくなる。
そこまでして理解を得たいと思うほど、菜々子は夏原に心を許してはいない。
「……でもそんなの、普通に考えて無理じゃないですか?」
「普通ならね。普通じゃないからわたしは自分から彼に関与はしません」
「でもそれじゃあなにも変わらないですよ」
「なにも変わらなくていいんですよ」
「両思いになれなくても?」
「なっても続くわけないし」
あっけらかんとした物言いに、夏原は眉をひそめた。

