まだあなたが好きみたい


そう言うも、親しいことが周囲の目からもわかることが率直に嬉しいのか、夏原ははにかむように鼻の下をこすった。


「気性の荒い人でしょう? 中学が一緒だから知ってるんです。あの人を制御できるなんて、きっと優秀なブリーダーになれますね」

「ぶ、ぶりーだー……?」


これにはさすがに夏原の笑顔も引きつった。

冗談かな、という眼差しを向けるも、菜々子に揺らぐ素振りはない。

彼女の本心だと知って、夏原は気がかりそうな顔になった。


「……あの、ひょっとして窪川に、何か、思うところでもあるんすか?」

「え?」

「えって、いやだって、今もそうだけど、前会ったときも窪川のこと、すごい顔で見てたから」


確かに、窪川と会うときのわたしは高確率で、異性には見せるべきではない顔をさらしている。

しかし菜々子はそらとぼけた。


「そうでしたか?」

「窪川のこと、嫌いなんですか?」


菜々子はこれには無言を返した。


「窪川、いいやつっすよ」


夏原が思い余ったように言った。

その勢いに気圧されて、菜々子は思わず鼻白んだ。


「窪川、部活だと一見怖そうで無愛想だけど、でも、いいやつっすよ。それに、超かっけぇし」