小柄だが幅のある体躯の少年が菜々子を見ていた。
どこかで見た顔だと思うが、はて、どこだっただろう。
「こんにちは」
「こんにちは……」
少年は小走りで寄ってきて、
「窪川の知り合いの人ですよね」と言った。
それで菜々子は、ああ、と思い出した。
先日、ファミレスの帰りに男の二人組に絡まれたとき、暴走しそうになった窪川を止めてくれた人だ。
有正も前に見たことがあると言っていた。
「バスケ部の、マネージャーの方、ですか?」
訊くと、夏原と名乗った彼は、苦笑を浮かべて、「選手です、一応」と訂正した。
「あっ、ごめんなさい……」
「いや、いんですいんです。俺、チビだし、脚太いし、ほとんどバスケ初心者だし。そう見えないねってみんなから言われるから」
「そ、そういうつもりで言ったわけじゃ。ただ、あの窪川を手なづけられる人なんて滅多にいないから、そうなのかなって。ごめんなさい、勝手に思い込んで」
辛辣とも思われる菜々子の表現に、夏原はぽかんと口を開けた。
「手なづけって……ペットじゃないのに」

