「思い込み強いとこ、あるしね、あの子」
「きっかけを作ってやれよ」
指先の海苔を払い、匡は次の授業の準備にかかる。
それを見つめながら、ぼそりと尾田が言った。
「窪川って、変わったよね」
「は?」
「いや、だって前はそんなこと言わなかったよ」
「そんなこと?」
「わたしが器用そうとか、睦美が内気だとか、ましてやきっかけを作ってやれなんて、そんなやさしいこと言うやつじゃなかったよ」
「じゃあどんなだよ」
「いや、もっとこう、は? どうでもよくね? 俺知らねー、みたいな」
「……。…俺、そこまで薄情じゃねぇつもりだけど」
「それは主観でしょ。周りからはそう見えてるよ」
マジかよ。
「俺、もうちょっと愛想いいぞ」
「はいはい」
「……おい」
恨めしげに尾田を見上げると、彼女はくくっと笑った。
そして表情をあらためると、
「――わかった。今日の夜にでも連絡してみる」
匡は頷いた。それがいい。

