まだあなたが好きみたい




案の定というべきか、睦美は学校に出てくることはなかった。

学校はその日のうちに彼女の両親からの報告を受け、色めきたって事の究明に乗り出したが、その調査は遅々として進まなかった。

というのも、睦美本人が、巻き込まれた災難について頑として口を割ろうとしなかったためだ。

また時間帯も悪く、目撃者がひとりもいないことも、彼らの進展を阻んだ。

好き勝手に刈られた髪の毛を見れば、誰かに乱暴をされただろうことは一目瞭然なのに、話したがらないのは口にすることさえおぞましい記憶だからだろう。

というのが大人たちの見解で、状況は二月をまたいでも依然として芳しいとは言えなかった。


「窪川、あんた、何か知ってる?」

「は?」


またしても補食のおにぎりを食べようとしているところを、級友の尾田が遮った。


「知ってるって、何を?」

「だから、睦美のことだよ」


尾田はあたりを憚るようにして言った。


「どうして休んでるのかって? 俺が知るわけないだろ」

「元彼じゃん」

「なんで元彼が別れた後もあいつの行動を逐一把握してないといけないんだよ。俺はストーカーか?」


それもそうかと、尾田は腕を組んだ。

一方、匡はばりばりと音高く海苔を噛む。