え、と菜々子は反射的に眉尻を上げた。
「窪川になにかされたの?」
有正は首を横に振った。
押し黙り、それがやけに長くて眠ってしまったのかと思った頃、有正は睫毛をふるわせてふたたび潤んだ眸をのぞかせた。
「菜々ちゃん、あいつ、けっこう、かっこいいよ」
空耳か?
菜々子は有正の口許に耳を寄せていた。
「なに?」
有正はもう喋る気力もないのか、ただ微笑んで、頷いた。
「有正、あなたやっぱり熱があるわ」
菜々子は有正の手を布団の中に入れた。しっかり肩口を押さえて、汗を拭う。
この間までみそくそに言ってた窪川のことを見直すなんて、よっぽど深刻なダメージを受けたにちがいない。

