まだあなたが好きみたい


「まさか。そんなことさせたら下手したら俺まで罪を被ることになるだろ。俺はねえ、君が関わった例の件を仕出かしたやつらみたいにバカじゃないし、ちゃんと前後もわかってる」


そこまで言うからには、法に触れるようなことではないのだろうとは信用してもいい気がした。

確かに彼はやつらとはちがうし、まとう雰囲気からも育ちの良さや日常の充実を思わせるオーラのようなものを感じる。

そんな人が、まともからかけ離れた愚行に手を染めるとは思えなかった。

たとえ現状脅されているとわかっていても、はじめの印象が最悪でも、自信と分別の伴った口ぶりには彼らが持ち合わせなかった良識を感じたし、そう思えばここは眼鏡の言うことを聞いておいたほうが賢明な気もする。

どんな人にも、他人を利用してまで解決したい悩みはあるのだろう。

利用なんて言葉を使うから剣呑な感じに聞こえるだけで、多分、彼が考えていることはそういうこととはちがうのではないか。

たとえば人が人を介して知人になることとそれは似ている。


「絶対に、有正を傷つけることにはならないんですね?」


眼鏡は安堵したように、はじめて穏やかに微笑んだ。


「約束するよ」