「過去の罪は十分に認識してるつもりだ。あいつに憎まれてることも、恨まれて当然だってこともわかってる。そのうえで俺はあいつが好きだ。あいつが欲しい」

「勝手なこと言わないでよ。菜々ちゃんがまかり間違っておまえを欲しいと思うことはあっても、おまえは菜々ちゃんを欲しいなんて言える立場じゃないでしょ。身の程をわきまえなよ」

「おまえをどうにかしないとあいつに近づけないのはわかってる」

「ぼくはどうにもならないよ。ぼくはこんな性格だからね」


得意のシニカルな微笑を浮かべて、有正は悠然と立ちふさがる。

……こんなことを言うのは卑劣かもしれない。

正直、今でも揺れている。

しかし匡は迷った末に、憂いを打ち消し心を決めた。

けれど他に得策もない。

思い切った手段に打って出るしかもはや手立てはなかった。


「そうだな。おまえがそうだから俺たちは、ああいう方法でおまえの菜々ちゃんを貶めたんだからな」

「は?」


有正は不審そうに瞬きをした。


「どういうこと」

「おまえが目障りだったんだよ。だから、いちいちおまえを庇う吉田菜々子が邪魔だった。俺たちは、おまえさえ大人しくさせられればそれでよかったんだ」