有正は菜々子が幹事になりたくない、木野村と関わり合いになりたくない理由を知っている。

それなのに。


いや、だからこそ、か。


これはたぶん、窪川から菜々子を離したいと願う有正の策略なのだ。

近田の助け船をして、より断りにくい状況に持ち込めば、菜々子を彼女の意思に反して、異性の集まる”そういうこと”ありきの環境に押し込める。

まして木野村は以前に一度、菜々子に思いを寄せていたという経緯がある。

もしかするとまた、との思いがあるのかもしれなかった。


(……意地が悪すぎるわよ)


だが結果として菜々子は断りきれぬまま、近田の頼みをずるずると引き受ける格好となってしまった。

バレンタインの単語を出すとたちどころに女子も集まって、とんとん拍子に日取りまで決まってしまう。

何から何まで有正の計算どおりなのが腹立たしい。