「ねえ近田、それほんとに津ノ田先輩? もっとお相撲さんみたいな体型じゃないの?」


近田はいきなり顔を背けたかと思うと、ぶはっと噴出した。

意味がわからず、菜々子たちは顔を見合わせる。


「ああ、それはだな、去年の春までのことだ。先輩はもう二人の記憶にあるようなぽっちゃりじゃねーよ。先輩と監督に叱られて、壮絶なダイエットに励んだからな。んで、そんときの苦い記憶がこびりついてるから、先輩に過去の体型の話を持ち出すのはご法度なワケ」

「痩せたらイケてる感じなの?」


どう見ても無理じゃない? という菜々子の心が聞こえたみたいに(実際には顔に出ているからだが)近田は苦笑すると、


「辛辣に聞えるかもだけど、あくまでそう見える人には、かな。俺はまちがいなく木野村推しだよ」


そりゃそうだ、と菜々子も力強く頷いた。


「世ノ中ドーカシテルゼ」

「あなた誰?」


遠い眼差しの有正に菜々子は鋭く突っ込んだ。


「ところでさ、そんなことがあって傷心中の木野村を励ましてやりたいんだけども」

「いいじゃない」

「なんか提案ないかな」

「木野村くんは何が好きなの?」

「男なら肉でしょ。ぼくならお寿司だけど」

「有正は黙ってて。カラオケとか? ボーリングとかかな」

「あいつっつったらやっぱプールだろうなー」

「は、どんだけ!」


有正を無視して菜々子は、へえ、と感嘆の声を洩らす。