まだあなたが好きみたい


「だからってそれを人に使っちゃだめよ」

「でもでも、菜々ちゃんだって木野村って人のがイケメンだと思うでしょ?」


菜々子は返答に困った。

それを聞かれると、NOとは逆立ちしたって言えない。

津ノ田は菜々子たちと同中だ。

後輩に知り合いも多く、先生からの覚えも悪い意味でいい、要するにそういう側の人間だ。

そのくせまあまあ勉強はできたようで、だからこそこうして同じ学校にいるわけだが、そもそも素行が悪い時点でマイナスの印象しかない菜々子たちに、ましてそれを補えるほどの美顔の持ち主でもない――なにしろ中学時代のあだ名は沈まぬ豚――彼に、そこまで熱を上げる女子がいようとは……にわかには信じがたい。


「それは、まあ……」

「ほらねー」


それでなぜ勝ち誇ったような顔をする。


「でも津ノ田先輩、実際にけっこう人気みたいだぞ」

「えーっ! どーこーがー?」


あけっぴろげに不思議がる有正をたしなめるのはもう疲れた。

それに、菜々子自身も……。


「その理由は、わたしもちょっと気になるかも。中学では恐れられてばっかりだったもん」

「あの人、高校に上がるのと同時に引っ越したから、電車でも見かけないんだよね」

「がっちりしてるし、筋肉あるし、目つきもきりっとしてるし。なんか、悪い系のアイドルみたいとかって女子は言ってるけど……どうした有正、顔色が悪いぞ」


石になったような有正に代わって、菜々子が訊いた。