そこには有無を言わさぬ響きがあった。
早くこの場を収束させたかった。
するとさびしげに、同情じゃないよね? と有正が目顔で問うてきた。
ちがう、という決然とした眼差しを菜々子は返す。
有正は肩をすくめると、仕方なく先に立って歩き始めた。
レジを待つ列は通路に達しようかというほどである。
ただ待っているのも退屈なので、菜々子は近くのカフェで時間を潰すことにした。
だがここも大混雑だ。
そうなることを見越してか、テーブルの数が増やされ、通路にまで侵食している。
大半が家族客で、山のような荷物に囲まれて、人心地ついた体でくつろいでいる。
その中でひとりというのはけっこう恥ずかしいものがあった。
カウンター脇のテレビが映すお笑い番組をとりとめもなく眺めていると、妙な視線を感じて菜々子は首を捻った。
しかし知り合いらしき人物は見当たらず、菜々子は意識をテレビに戻す。
だがそれから二分も経ったかというとき、ここ空いてますか? と男の声で問いかけがあった。
見えた脚は二人分。いずれも男だ。
「ああ、はい。どうぞ」

