まだあなたが好きみたい


「五歳児になったつもりで混ざればいいじゃない。80歳くらいのおばあちゃんから見ればぼくたちも五歳児もどっちもけつの青い男の子なんだから」

「黙れ貴様」


夢見心地な色づかいと意匠で、いかにもハッピーを凝縮したかのような店先で、そもそも場違いの男子高校生のにらみ合いはおそろしいまでに人目を引いた。

しかも、そのうちのひとりはディズニーの福袋を後生大事にキープしているという滑稽極まりないちぐはぐ感。


あぁあ。もういや。


埒が明かないと菜々子は天井を仰ぐ。


「有正だったら特別に無料で貸し出すわよ。有正、平気でしょ、こういうとこ」

「え、そりゃあ平気だけど、でもえー? こいつと並ぶのー? やだよ。なんか、やばいの伝染りそうじゃん」

「んだとこら。おまえなんか俺だって願い下げだ」

「だったらひとりで行けば?」


間髪をいれず、二人は言った。

寸分の狂いもない完璧なシンクロである。


うっと窪川はわかりやすく怯み、桃色の店内を振り返るといっそう哀れな顔になった。


菜々子は有正の背中を叩く。


「こいつに恩を売っておくと何かと便利かもしれないわよ」