「菜々ちゃん、ぼく言ったよね? これからこの人とは関わっちゃいけないって。それなのにどうしてまたこいつと一緒にいるの? 乱暴されそうになったの? そうだよね。わかるよ。だって乱暴そうな顔してるもんね。痛くなかった?」
「こらこらこら。なんで俺が乱暴したことになってんだよ。だいたい、人を顔で判断するな」
ちょっと! さっき自分もしたじゃない!
自分のことは棚に上げるのねと、菜々子は煮えくり返る思いだったが口には出さなかった。
これ以上口を挟むと長くなることは知っている。
菜々子は有正の手を引いた。
「行こう有正。もうわたしの役目は終わったの。それにわたし、まだ見てないお店があったの思い出したんだ」
「そうなの? じゃあ行こう」
「ちょっ、ちょっと待てよ! 頼まれたら金出すとこまできっちり付き合え」
「そこから先は別途料金がかかります」
「オプションかよ!」
「そういうことだからあとは一人で頑張って」
「ま、待てよ! 俺にあのレジまで行けって言うのか? ひとりで? そんな酷な話があるかよ」
「わたしには酷じゃないわよ?」
「だろうな、女なら! だったら安いもんだろ。着いてきてくれよ」
「い・や。どうしてもって言うなら、だから、はい」
菜々子は手のひらを見せる。
「ない袖は振れない」
「じゃあわたしも付き合えない」
「一人で行きなよエース。ほら、よく見ると男の子だって中にいるよ」
「あんなの彼女の付き添いだろ。あとガキ」

