それを暫し怪訝そうに見つめた後、窪川は何を思ったか、そこに、あたかも淑女が手を取られるかのようにやんわりと自身の手を重ねた。


「ちっっがうわよ!」


菜々子は牙を剥いて窪川のごつごつした手を振り払った。


「なんだよ!」

「お金を寄越せって言ってんの。代わりに買ってきてあげるから」

「やだね」

「だったらいいけど」


しかし窪川は怯まなかった。


「だっておまえ、ネコババするだろ? そういう顔だもんな」

「は、はあ!? 失礼ね! そんなことしないわよ。あなたに許しがたい罪はあっても、あなたのいとこに罪はないもの」

「だからっておいそれと渡せるか。いいから着いて来いよ」


手を引かれ、ちょっと、と抵抗するがびくともしない。


「着いてきてください吉田さま、くらい言えないの」

「小学生みたいなこと言ってんじゃねーよ」