「連れ? でもひとりなんだろ、今」


は? 菜々子は眉根を寄せた。


「だから? 用事を済ませてるのを待ってるって発想にはならないの?」

「ああ、そうか。だったら待ってる間でいいから、俺に付き合えよ」


めちゃくちゃだなおい。


「その自己中心的な考え方をすこしは改めたらいかがかしら」

「ちょっとでいいんだよ。里帰りしてるいとこからさ、てめぇのガキのためにディズニーの福袋買ってこいって頼まれたんだ。それってあそこのきらっきらした店のことだろ。俺、あそこに一人で入ってく勇気はねぇよ」


窪川が嫌そうな顔で視線を向けた先には見るからに周囲のショップとは気色のちがう店構えで、小学生から高校生までのうら若き少女たちがこぞって詰めかけている店がある。


たしかにあそこに男がひとりで入っていくのはかなりの抵抗があるだろう。


「じゃあ、はい」

「なんだよ?」

「だから、はい」


菜々子は仕方なく、手のひらを上に向けて窪川に差し出した。