「食べるわけないだろ。今から帰るとこだ」


白井が応じると、だよね、と夏原は嬉しそうに頷いた。


「それでなんだけど、俺んち、大晦日は年越しうどんなんだよ。家族にアレルギー持ちがいてさ。俺はそば、大好きなんだけど。だからね、今から3人でそばを食べに行きません――」

「行かない」

「行かねぇ」



白井と匡は揃って否定した。


あー…と夏原は失笑するも、すぐさま気を取り直し、あくまで大らかに食い下がる。


「息ぴったりじゃないですかお二人さん」

「どこがだ」

「どこがだよ」

「被るなよ、キモいだろ」

「勝手に被って来てんのはてめえのほうだろうが」

「まあまあ。なあーいいだろー付き合ってくれよ。今日ぐらいお互い寛大になろうぜ。二人ともコートだけだよな格好いいのってマジで――……おおっと、俺いまもしかして地雷を踏んだかな?」



すると次の瞬間、おもむろに両側からするりと腕を回され、夏原は硬直した。