それは、1年でありながら常に先頭に立ってチームを引っ張ってきた主力選手だからこそ見える世界であり、そして、そういう世界で戦ってきたやつだからこそ、はっきり割り切れてしまうまでに身に沁みた理不尽な現実なのだと思う。
白井はつくづくと目の前のいけ好かないエースを見つめた。
おそらくこれが、こいつが戦っている世界なのだ。
チームというより、エース同士の実力と面子の争い。
その差が勝敗を分かつ世界。
こいつはそれと知っていて、だからこそ敢えて周囲と一線を引いて研鑽を積んでいるのだとしたら。
こいつはこいつなりの理屈でチームに貢献しようとしているのだろうか。
(どんだけ格好つけたいんだよ)
白井は不覚にも畏敬の念のようなものを覚えかけ、慌てて打ち消した。
こいつがすごいことなんて中学のときからわかってるんだ。
でもそれと尊敬するのとは別の話だ。
こいつの言うことだってあながち間違いではないかもしれない。
けれど、そんなやり方で貢献したって見返りに得るものはあるのだろうか。
名誉か? ひとりで勝ち取った名誉。
そんなものに本当の価値を見出せるのか。

